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最高裁判所第二小法廷 昭和36年(あ)1675号 判決

主文

本件各上告を棄却する。

理由

弁護人大竹武七郎の上告趣意(一)について。

所論中判例違反の点は、引用にかかる判例は本件に不適切であって採用できない。その余は単なる法令違反および事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。被告人下村文夫が頒布した「選挙事務所開き御通知」と題する文書は、依田敏治選挙事務長滝沢寛次名義で、「早春の候同志各位には益々御清祥大慶に存じます。扨て県会議員選挙もいよいよ四月八日告示となりますが、選挙戦に先立ち左記により事務所開きを行いますので万障お繰合せ同志多数御誘いの上御出席賜り度御案内申し上げます」と記載されており、その外形内容自体からみて選挙運動のために使用する文書と認めるのが相当である。

同(二)および(三)について。

所論は単なる訴訟法違反ないし事実誤認の主張および量刑不当の主張であって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人鈴木敏夫の上告趣意第一点について。

所論は憲法三七条二項違反および審理不尽の違法を主張するけれども、憲法三七条二項は、被告人側の申請した証拠は必ず取調べなければならないという趣旨でないことは、判例の示すところであり(昭和二二年(れ)二三〇号同二三年七月二九日大法廷判決、集二巻九号一〇四五頁)、

また記録を調べても、原審が所論証人尋問の申請を却下してこれを取調べなかったことを以って審理不尽となすべき事由は認められない。

同第二点について。

所論は採証法則違背、事実誤認の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

同第三点について。

所論中訴訟法違反の点は刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

判例違反の点は、原判決の支持した一審判決は被告人金井敏雄と寺島武雄とが共犯であるとは認定していないのであって、所論は原判示にそわない事実を前提とする判例違反の主張であり採用できない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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